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2022年度共同研究プロジェクト 岩﨑志保

採択課題名

ICT技術による文化資源の社会化と活用に関する実践的研究

メンバー一覧(氏名、所属)

岩﨑 志保岡山大学・文明動態学研究所
山口 雄治岡山大学・文明動態学研究所
津村 宏臣同志社大学・文化情報学部
笹倉 万里子岡山大学・自然科学学域

研究の概要

2019年施行の改正文化財保護法により文化財の総合的な活用、なかでも歴史文化遺産をまちづくり等に活用することが促進されている。この状況下、地方・地域では特に文化財・文化遺産を、文化資源として社会化することがその有効な活用を図るために必要である。

本研究では岡山大学構内遺跡のひとつである鹿田遺跡をフィールドに、地域社会と遺跡・歴史との親和性を構築するために、ICT技術を活用した広報コンテンツを製作する。その製作過程では計測やコンテンツ視聴等に際しICT技術の有効な利用法を検討し実践する。またコンテンツを用いた同遺跡の調査成果をアピールする機会を学内・学外で創出する。

本研究は、遺構・遺物の記録、成果の公開について新たな可能性を検討し、調査研究成果をわかりやすい形で伝えることで、大学から社会への知の還元を図るものである。こうしたことも文化財の保護・保存に必須であり、岡山大学鹿田遺跡を一つのモデルケースとして活用する。

研究実施状況

 6月にメール協議で打ち合わせを実施し、今年度の作業を確認した。昨年度から継続しているVR・ARコンテンツの構築を引き続き行い、年度末に開催する文明動態学研究所第1回特別展で公開・体験機会を設けることを目的とした。

 VRコンテンツの個別データは昨年度計測しており、同志社大学文化遺産情報科学調査研究センターにて構築作業を実施した(担当・津村)。新たな出土遺物の3次元計測にも着手した(岩﨑・山口)。

ARコンテンツについては、10月に岩﨑・山口・笹倉により打ち合わせを実施、岡山大学工学部情報系学科ソフトウエア分析学研究室の協力を得て、Ipadで操作するAR体験アプリを構築することとした。この解説にはしかたん動画を加えることとし、動画作成および一部イベントでの公開を、「古墳フェスはにこっと」(2022年11月)会場にて実施した。

 2~3月の第1回特別展では、VR体験、AR体験コーナーを設置し、一般に公開した。

 同展示会期中、1か月間にアイトラッキング調査を実施した。専用眼鏡を装着し、展示観覧のデータを採取するものである。展示方法や解説の効果検証や今後の広報計画への反映を目的として、今後データの分析を行う。

研究成果の概要

 2021年度から継続して岡山大学鹿田遺跡の発掘調査成果をもとにしたVR・ARコンテンツの構築および公開を行った。公開は文明動態学研究所第1回特別展会場(2月10日~3月19日)において実施した。

 VRコンテンツは鹿田遺跡の弥生時代後期前半の調査成果をもとに、同時代の集落を体験するものである。具体的には専用ゴーグルを装着して、竪穴住居、高床式倉庫、井戸を設置したフィールドにたち、井戸の中に入り出土品を手に取って観察する、という体験である。井戸の中には、同一の井戸から出土した土器を配置した。VR構築および展示会場設営については同志社大学文化遺産情報科学調査研究センターの協力を得た(担当:津村)。また新たに出土遺物の3次元計測を行った(岩﨑・山口)。

 ARコンテンツは同じく弥生時代後期前半の土器を3Dデータ化し、画面上で自由に観察するものである。しかたん動画による解説視聴や、「平面検知」・「マーカー検知」等により、観覧者の思うように土器を配置する等の体験が可能である。iPad への実装については岡山大学工学部情報系学科ソフトウエア分析研究室の協力を得た(担当:笹倉・岩﨑)

 また同特別展において、展示観覧におけるアイトラッキング調査を実施し、20名の被験者を得た(2月15日~3月11日)。専用眼鏡を装着して観覧することで、視線の動きや時間をデータ化するものである。本調査の方法・データ採取・アンケート作成について検討し、学生雇用1名を得て、調査を行った(担当:山口・岩﨑)。専用機材をレンタル期間中最大限に使用し、データの採取に努めた。データの分析については次年度に継続したい。

 このほかICT技術を活用した展示の試みとして、調査風景の動画解説や、解説パネルからリポジトリへの誘導等を同特別展にて行った(担当:岩﨑)。

 上記のVR・ARの構築やICT技術による展示公開について、岡山大学文明動態学研究所文化遺産マネジメント部門公開講座を行った(岩﨑:3月11日・岡山シティミュージアム)。