共同研究プロジェクト 松岡弘之
採択課題名
長島愛生園の歴史資料・文化資源の継承にむけた基盤構築
メンバー一覧（氏名、所属）
| 松岡弘之 | 岡山大学・社会文化科学学域 |
| 伊藤駿 | 岡山大学・教育学域 |
| 木下浩 | 岡山大学・医歯薬総合研究科 |
| 才士真司 | 岡山大学・教育学域 |
| 田中キャサリン | 兵庫県立大学・国際商経学部 |
| パクミンジョン | 岡山大学・環境生命科学学域 |
研究の概要
本研究は、1930年に初の国立ハンセン病療養所として設立され、日本のハンセン病政策の動向全般に大きな影響を与えた長島愛生園（岡山県瀬戸内市）において、近年になって所在が確認された、①入所者自治会作成資料、②入所者運動や芸術活動に取り組んだ個人資料及び作品、③施設建設および維持・管理に関する建築関係資料といったさまざまな歴史資料および文化資源の調査を学内外の研究者が協力しながら進める。それを踏まえて、長島愛生園の空間的構造を把握しつつ、そこに展開した入所者運動や文化芸術活動といった、入所者の主体的かつ創造的な活動を総合的に考察することを通じて、ハンセン病療養所における生存のための諸条件を文理融合的な見地から考察する。また、これらの歴史資料・文化資源を入所者の「生きた証」として継承していくための課題等をあわせて検討し、今後の活用基盤を整備・構築するうえでの基礎的研究を行う。
研究実施状況
共同研究メンバーで適宜情報交換を行いながら、それぞれが長島愛生園における資料調査およびその分析に取り組んだ。具体的には、7月以降、施設管理課資料（508点）について細目録作成作業を実施し、424点の簿冊から約4,400点の図面の存在を確認した。これらは種類・寸法や編綴の形態も多様であることから、撮影手法等活用に向けた調査手法について検討を行っている。また、戦後入所者運動に尽力した島田等（1926-1995）によって作成・収集された「島田等資料」のうち、目録が作成されている1950年代以降の資料を中心に約120点の撮影を行った。ただし、島田等資料は目録が全く作成されていない資料も文書箱30箱程度ある。以上のように、施設管理課資料・島田等資料のいずれも悉皆調査の完了にはいたっていない。一方、洋画家・清志初男（1926-2020）の履歴、および療養所内で作成された詩歌を中心とする文芸作品についても調査を継続した。以上の成果について、2021年12月に学内で展示会を開催した。さらに、開設後の療養所内を撮影したガラス乾板写真（378点）から30点をパネルに作成し、一部は2022年4月から岡山大学附属図書館中央館2Fムラタアカデミアで展示を行う予定である。
研究成果
長島愛生園内で確認された未整理資料の評価・分析に取り組み、以下のような成果を挙げた。
【論文】
松岡弘之「購買部からみたハンセン病療養所―長島愛生園1937-1948」岡山大学社会文化科学研究科紀要『文化共生学研究』第21号（2022年3月）
Tanaka, Kathryn M. 2022. Community and Matsuri in Hansen’s Disease Litera ture from Nagashima Aisei-en. Carmen Săpunaru Tămaș and Kathryn M. Tana ka, eds. Epidemics and Ritual Practices in Japan. Pro Universitaria, 2022: 67-90. Available open-access online: https://carmentamas.com/wp-content/uploads/2022/03/SAPUNARU-TAMAS-C.-Epidemics…-15.03.2022.pdf
【学会発表等】
松岡弘之「近代日本のハンセン病療養所における生活と自治―「清潔」・「洗浄」を手がかりに」国立歴史民俗博物館産学共同研究「清潔と洗浄をめぐる総合的歴史文化研究」研究会、2021年9月9日、オンライン
Minjeong Park, Toshio Otsuki. Formation Process of the Treatment Environme nt for Hansen’s Disease in Japan and its Uniqueness. 4th International Conference of the East-Asian Society for Urban History, 2nd International Conference of the HK+ Institute for Integrated Medical Humanities. 2021.
Minjeong PARK. The Supply and Maintenance Process According to the Type of Patient Housing in National Sanatoria in Japan. 在日韓国科学技術者協会第13回合同分科会. 2022. (In Korean)
【展示】
才士真司・伊藤駿「And Recovering Them そして、それらを回復する」主催・岡山大学大学院教育学研究科《国吉康雄記念・美術教育研究と地域創生寄付講座》、2021年12月5日～26日、会場・岡山大学津島キャンパス五十周年記念館交流スペース（清志初男作品の展示）
松岡弘之・パクミンジョン「ハンセン病療養所入所者の「生きた証」―RIDC共同研究成果発表展」2021年12月5日～26日、会場・岡山大学附属図書館中央図書館ムラタアカデミア（自治会所蔵資料、施設管理資料の展示、上記「And Recovering Them そして、それらを回復する」の関連事業）