2025年度 文明動態学研究所 共同研究プロジェクト 東野将伸
採択課題名
岡山地域における歴史資料の基礎的研究―地域史・医学史・東アジア研究の観点から―
メンバー一覧(氏名、所属)
| 東野 将伸 | 岡山大学・社会文化科学学域 |
| 德永 誓子 | 岡山大学・社会文化科学学域 |
| 松岡 弘之 | 岡山大学・社会文化科学学域 |
| 久野 洋 | ノートルダム清心女子大学・文学部 |
| 加藤 明恵 | 大手前大学・国際日本学部 |
| 松下 正和 | 神戸大学・地域連携推進本部 |
| 天野 真志 | 国立歴史民俗博物館 |
| 吉葉 恭行 | 岡山大学・ヘルスシステム統合科学学域 |
| 笈田 将皇 | 岡山大学・ヘルスシステム統合科学学域 |
| 松尾 俊彦 | 岡山大学・ヘルスシステム統合科学学域 |
| 古俣 めぐみ | 岡山大学・ヘルスシステム統合科学学域 |
| 長志 珠絵 | 神戸大学・国際文化学研究科 |
| 福島 幸宏 | 慶応義塾大学・文学部 |
| 岩崎 志保 | 岡山大学・文明動態学研究所 |
| 中谷 文美 | 関西学院大学・社会学部 |
| 藤井 和佐 | 摂南大学・現代社会学部 |
| 北川 博史 | 岡山大学・社会文化科学学域 |
研究の概要
岡山地域における歴史資料の保全・研究・公開とそのための方法論を提起するとともに、岡山地域の歴史像を豊富化することを目的とする。
まず、文化財レスキュープロジェクトの一環として、被災史料(主に古文書)・医学関係資料の復元および保全方法の開発を継続し、これらの資料の整理と分析を進める中で、今後実施可能な研究の可能性を探る。加えて、1949年から1955年にかけて岡山に設置されていた米国ミシガン大学日本研究所岡山分室(Okayama Station)の活動と岡山大学との関わりや、この時期に撮影された写真の分析を通じて、戦後岡山地域史と岡山大学との関わりについての研究を行う。具体的には、①西日本豪雨などの災害による被災史料の保全措置と保全方法の開発、②診療記録などの医学関係資料の整理と内容把握、将来の活用に関する基礎的な研究、③ミシガン大学日本研究所岡山分室に所属したJ.W.ホール(1916-1997)が残した岡山県内外を中心とする約1,700点におよぶカラースライド写真の分析を行う。
研究実施状況
主に岡山県内の史料のレスキュー・保全措置を行うボランティア団体である「岡山史料ネット」との連携のもと、2018年西日本豪雨被災史料のクリーニング作業(H家文書・M家文書)、2023年に寄贈されたF家文書の襖下貼り剥がしの作業を継続して進めた。この作業時などに、史料クリーニングの方法や今後の史料保管体制などについて、参加者と議論を行った。2025年7月・10月には、M家文書の撮影作業を学生アルバイトの協力も得つつ進め、全点の撮影を完了した。同家文書については、岡山市立中央図書館と協議し、同館へ寄贈する方針で調整を進めている。また、2025年7月に岡山史料ネットの活動報告会(「能登半島地震といしかわ史料ネット」)に参加し、金沢地域の事例をふまえつつ資料保全についての議論を深め、参加者との情報交換を行った。カラースライド写真の分析については、2026年9月から岡山シティミュージアムで開催が予定されているRIDC第2回特別展の第2部として位置づけることとなり、2025年11月・12月、2026年3月に共同研究者による検討会を開催して展示テーマの検討や資料の修復に継続的に取り組んだ。ワークショップ等の開催にはいたらなかったが、写真を紹介するために新聞連載を計画し、関係先と協議を進めた。
研究成果
岡山県域を中心とした被災史料(主に古文書)の保全と活用、公開に向けての記録作成や関係機関との協議、災害と地域社会に関する基礎的研究を実施した。特に、岡山史料ネットとの連携やボランティア・学生アルバイトの協力も得つつ、平成30年7月豪雨によって被災したM家文書のクリーニング・写真撮影・データ整理をすべて完了した。同文書は岡山市立中央図書館へ寄贈する方針が決まっており、先方などと引き渡し日程やその方法などについて協議中である。これらの一連の整理・調査作業から、まとまった被災史料のクリーニング・整理において必要な労力・時間・機材などについての知見を得たことは、本研究の成果の一つであり、社会連携や学生教育という点でも意義あるものであったと考える。岡山大学に関連する歴史資料(診療記録等)の整理・分類については、次年度以降の調査計画を検討し、整理・分類作業や研究会を進めるための準備を行った。次年度以降、整理・分類作業をより本格化させていくことを予定している。衣川太一氏所蔵のカラー写真の生成過程や被写体に関する情報の調査、特に重要なものの高精細なデジタル化と退色補正など計8点の修復を行い、活用基盤を整備した。このうえで、同写真に関わる地域歴史資料や岡山大学の活動についての調査・研究を進めた結果、長志珠絵「Area Studies のなかの「地域史」研究―歴史研究者、J.W.ホールから見るミシガン大岡山分室と瀬戸内海総合研究会―」『文明動態学研究』5巻(2026年)として公表した。