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2024年度 文明動態学研究所 共同研究プロジェクト 本村昌文

採択課題名

日本における「孤独」観・「孤立」観の過去と現在-「分断」と「つながり」の再考に向けて-

メンバー一覧(氏名、所属)

本村 昌文岡山大学・ヘルスシステム統合科学学域
島田 雄一郎大島商船高等専門学校
山本 大介大東文化大学・文学部
戸田 聡一郎東北大学 文学研究科
石田 依子宮城学院女子大学 一般教育部
周 琛東南大学(中国) 国際老齢化研究センター

研究の概要

本研究課題は、「孤独」・「孤立」をめぐる言説を古代から現代に至る日本を中心に収集し、日本における「孤独「孤立」」に関する意識や捉え方を明らかにすることを目的とする。超高齢社会を迎えた現代日本において、高齢者の「孤独」「孤立」への対策が急務となっている。また高齢者のみならず、育児、就学期の引きこもりなど、人生の様々な段階で「孤独」「孤立」をめぐる問題が顕在化しており、具体的なサポート体制や予防策の研究も進んでいる。しかし、デイヴィド・ヴィンセント『孤独の歴史』(山田文訳、東京堂出版、2021年)、フェイ・バウンド・アルバーティ『私たちはいつから「孤独」になったのか』(神崎朗子訳、みすず書房、2023年)など、西洋社会における「孤独」の形成に関する研究動向をふまえると、「孤独」は歴史的に形成されてきた概念であり、またそうした歴史的な形成をふまえ、現代的な課題においてどのような「孤独」が望ましくないのか、サポートを必要とするのかを見極めていくことが必要である。日本においてこうした問題意識にもとづく体系的な研究は今後の課題として残されており、また「孤独」と「孤立」それぞれの意識や捉え方の共通性と差異についてはほとんど研究が進んでいない。以上をふまえ、本研究課題は日本における「孤独」「孤立」観の歴史的形成と現代日本の「孤独」「孤立」をめぐる諸課題を解決する糸口を分野横断的に探索することを目指す。

研究実施状況

2024年8月8日  研究会(オンライン):主に科研申請に関する打ち合わせ

2024年12月16日 研究会(オンライン):各自の研究紹介、「孤独」・「孤立」に関する扱う資料・データの検討

2025年2月1日  研究会(対面):「孤独」・「孤立」に関する扱う資料・データの検討、予備調査(「孤独」「孤立」に関する意識調査)の検討

2025年3月15日 研究会(対面・オンライン、科研費23K00109の研究会と共催):近現代日本における「迷惑をかけたくない」という思いに関する研究プロジェクト(科研費23K00109)、「棄老」をめぐる研究プロジェクトと共同で研究会を開催し、「孤独」「孤立」に関する研究を進める方向性・意義等についてディスカッションした。

研究成果

このプロジェクトは新規に立ち上げたため、本年度はメンバーのこれまでの研究の紹介・共有、科研費申請のために参画するメンバーの探索が研究活動の中心となった。研究活動を行うなかで、「孤独死」をテーマに研究を進めている法医学の研究者と交流することができ、人文学と法医学の協働から「孤独「孤立」にアプローチをする科研申請(挑戦的研究)を行った(2025年3月31日時点、結果待ち)。

 人文学で扱う資料・データと法医学で扱う資料・データについて、双方の意見交換、情報交換を行い、具体的に人文学と法医学の協働のあり方を検討した。その作業の一環として、「孤独」「孤立」に関する予備的な調査を行うために、質問項目などの検討を行い、次年度以降、実施を予定している。

 直接「孤独」「孤立」を扱った論文ではないが、「孤独」「孤立」を生み出す要因となる「迷惑をかけたくない」という意識に関する研究成果の海外発信の一環として、以下の論文投稿を行った。

本村昌文、围绕衰老、看护和死亡的“不想给他人添麻烦”想法的过去与现在、『南開日本研究』33、2025年10月刊行予定、査読有