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2025年度 文明動態学研究所 共同研究プロジェクト 伊藤駿

採択課題名

国吉康雄の文化的アイデンティティーを背景とした社会課題への態度を国吉康雄作品の画風の変遷から明らかにする

メンバー一覧(氏名、所属)

伊藤 駿岡山大学・国吉康雄研究講座
才士 真司岡山大学・国吉康雄研究講座
赤木 里香子岡山大学・教育学域
山村 みどりニューヨーク市立大学キングスバロー校
奥村 一郎和歌山県立近代美術館
山路 弘ヤマト運輸株式会社 美術品ロジスティクスチーム
天野 静子(一社)日米芸術振興協会

研究の概要

本研究では昨年度に引き続き、岡山出身で20世紀前半のアメリカで活躍した洋画家であり、社会活動家、美術教育者であった国吉康雄(1889-1953)の作品制作とその画風の変遷における、明治期の岡山で受けたわが国の近代化を前提とした国家目標のもとで成立した美術教育や、その少年期の芸術体験の影響を、アメリカで進む国吉研究と近代美術への評価の更新との比較により明らかにする。

この課題の調査と、アメリカでアジア系移民のマイノリティーとして。そしてアクティビストとして国吉が対峙した社会課題への選択と対応をも検証することで、国吉が芸術家、教育者に加え、美術界のリーダーとして認知され、また自身の作品に付与した「社会と時代へのメッセージ性」を読み解く。

これらの調査を踏まえて、昨年までに実施した日本国内とニューヨーク、ワシントンD.C.を中心とした国吉康雄研究を検証し、より多層的な展開が可能な理論を検討、実践することで、現代社会課題の歴史的背景と継続性の理解に使用することを目的とする。

研究実施状況

本年は、岡山大学国吉康雄研究講座に寄贈された国吉研究の国内第一人者である小澤善雄・律子先生が収集した「小澤資料」の整理と分析と、2024年にニューヨークとワシントンD.Cで実施した研究者へのインタビュー記録及び映像の分析を中心に行なった。研究成果発表として、兵庫県立美術館で開催された「藤田嗣治×国吉康雄展」の記念シンポジウム 「20世紀前半の二人の日系画家をめぐって」に登壇し、報告する機会を得た。

小澤文庫の調査活動

国吉研究の国内第一人者である小澤善雄・律子先生が収集した「小澤資料」の寄贈を受け、本年6月に「藤田嗣治×国吉康雄」展を開催した兵庫県立美術館の学芸員らと共に調査を行なった。

調査活動の映像保存

ニューヨークの美術史家やナショナルギャラリーの学芸員への調査映像を映像素材として、記録・保管している。これをニューヨーク市立大学の山村みどり准教授の助言を得ながら検証を進めた。この過程を通じて、ワシントンナショナルギャラリー担当者との国吉康雄に関する意見交換の機会にも恵まれ、これを継続している。この成果発表の場して、ASEAN諸国を主な対象とした映像講義として発信する作業を進めており、オンラインプラットフォームであるJV-campusで公開予定である。

研究成果

本研究活動の中で収集された海外の国吉康雄及び、日系・アジア系アメリカ人アーティスト研究者の映像インタビューは、その学術性、新規性が評価され、NHK日曜美術館「ユニバーサルな美を求めて 国吉康雄と藤田嗣治」や、兵庫県立美術館で開催した「藤田嗣治×国吉康雄」展の会場映像として、映像の使用を要請され、これを許可した。

この映像を含む、2024年に取材した200時間以上の映像は、令和5年度大学教育再生戦略推進費「大学世界展開力強化事業〜ASEAN諸国からの留学生受入、定着促進のためのシステム構築等支援〜」に採択を受け、制作を続けてきた映像でも使用しており、ASEAN諸国だけではなく、ギリシャなどのヨーロッパ圏などへも広がり、受講希望者が200名近くに及んでいる。申請者はこの映像講義シリーズの企画者の一人として、主任講師を務めている。

6月に兵庫県立美術館で開催した「藤田嗣治×国吉康雄」展において、本研究の成果発表として「20世紀前半の二人の日系画家をめぐって」というタイトルで成果発表行った際、カリフォルニア大学教授のシープー・ワン氏から、Smithsonian American Art MuseumやUtah Museum of Fine Artsで開催された「Pictures of Belonging」展で扱われた画家のような、国吉康雄以外の日系人の研究ができないか。という共同調査の打診があり、この準備を進めている。
同様に、これらの発信により、国内外の研究者のネットワークが新たに形成され、今後の活動計画を検証している。