HOME / プロジェクト / 2025年度 文明動態学研究所 共同研究プロジェクト / 2025年度 文明動態学研究所 共同研究プロジェクト 岩﨑志保

2025年度 文明動態学研究所 共同研究プロジェクト 岩﨑志保

採択課題名

農牧接触地帯における動物利用と社会動態―中国先史・古代の動物意匠変化を通して―

メンバー一覧(氏名、所属)

岩﨑 志保岡山大学・文明動態学研究所
今村 佳子成城大学・民族学研究所
菊地 大樹蘭州大学・歴史文化学院
土口 史紀岡山大学・社会文化科学学域

研究の概要

考古資料に表された様々な動物意匠は、当時の人びとの動物に対する認識を反映したものであり、当時の動物利用の実態を示すものでもある。それらには地域的特徴を共有する一定の地域圏を認めることができる。

古来より農耕民と牧畜民が絶えず接触を繰り返していた中国西北地域では、近年、動物考古学を含めた考古科学の分析成果が増加しており、先行研究で指摘されてきた文化圏を別の角度から重層的に検証できる素地が出来つつある。そこで、動物意匠のありかたと実際の動物利用について、時期を追って整理する。共通点・相違点を見出し、その背景となる社会および精神性の普遍性や変化を考えるものである。

研究実施状況

2024年度から継続して各自資料収集を実施した。

牧畜経済の受容により、考古資料に認められる動物意匠にどのような変化が看取されるか。この課題について牧畜文化の受容過程と変遷を明らかにし(菊地)、精神性の変化の有無を検討した(今村)。遺物に表される意匠のほか、死者の埋葬にともなう変化の有無を確認するため資料収集を実施した(岩﨑)。関連して新出の文献資料から当時の動物利用を検討した(土口)。

3月に対面の打ち合わせを実施し、「鳥」を主眼においてそれぞれ論考としてまとめる方向性を決定した。

研究成果

本研究が対象とする農牧接触地帯である中国西北地域は、農耕民と牧畜民との接触が繰り返されてきた地域であり、近年考古資料の充実が増加しているものの、総合的な分析は比較的低調である点に注目した。構成員でそれぞれ担当する内容は異なるが、都度情報交換を行い、特に鳥の利用、鳥に関する造形、鳥に関わる文献資料、装飾文様等に着目してまとめてゆくこととした。

いくつか見通しを示しておく。新石器時代後期の造形には、例えば祭祀に関わる道具の装飾のように、土器や玉器等にさまざまな具象表現が認められる。卜骨にウシ・ヒツジ・ブタ、彩文土器にサカナ、形象土器にフクロウや水鳥、とその選択の背景には信仰や観念を読み取ることができる。
新石器時代後期以降漢代にかけて、西アジアを起点とした牧畜文化が東伝するなかで、中国西北地域では農耕的家畜から牧畜的家畜へ転換する現象がみられる。ユーラシア草原地帯でみられる五畜(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ)は、中国で受容される段階に六畜(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、イヌ、トリ)を形成するというように変容のありかたを認めることができる。

こうした新石器時代後期以降の流れを踏まえ、考古資料にあらわされる動物意匠や、墓葬にみられる動物利用等について時期を追って資料収集を実施している。その中では、西北地域の漢墓の代表的な一つである画像石墓の画題を検討し、表出された動物種に注目する、文字資料の解析による動物利用について検討する、といった視点を得ている。こうした検討はまだ途上であるものの、意見交換によって論点を確認し、論考としてまとめる作業を進めている。

これまでの研究成果の一部は、2025年度7月のマンスリーセミナーで報告し、また2026年度末の同セミナーで報告予定である。
  2025年7月2日 第47回RIDCマンスリーセミナー「ラクダの東伝」菊地大樹
  2027年4月予定  第66回RIDCマンスリーセミナー 題目未定 今村佳子