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RIDC共同研究プロジェクト「性差(ジェンダー/セックス)への異分野横断的アプローチ:カテゴリー化を再考する」活動報告

RIDC共同研究プロジェクト「性差(ジェンダー/セックス)への異分野横断的アプローチ:カテゴリー化を再考する」では、2021年10月16日~2022年3月13日に金沢21世紀美術館で開催中の二つの特別展「フェミニズムズ / FEMINSMS」「ぎこちない会話への対応策―第三波フェミニズムの視点で」をグループで観覧し、担当学芸員の高橋律子さんとディスカッションをする機会を得ました。複数形のフェミニズムのありよう、性差への多様な向き合い方、美術技法に込められたジェンダー観とその乗り越え等、研究会のテーマとも深くかかわる見ごたえのある内容でした。高橋さんとは、展示企画の背景や意図、個別の作品に込められたメッセ―ジなどをお話しいただいたほか、上記を含む広汎な話題について意見交換をすることができ、充実した時間となりました。このエクスカーションでの成果を今後の研究会での議論にもつなげていきたいと考えています。(中谷文美)

金沢21世紀美術館学芸課キュレーターの高橋律子さんを囲んで。地元の金沢大学のメンバーらも合流してのディスカッションとなった。専門分野や世代の異なる顔ぶれだからこそ、多様な観点からの話が盛り上がった。
碓井ゆい《shadow of a coin》 2013-2018年
金沢21世紀美術館「フェミニズムズ / FEMINSMS」展(2021-2022年)より

通貨の形をしたオーガンジーに刺繍されているのは、女性たちが担ってきたさまざまな「シャドウ・ワーク」。かつてイバン・イリイチが提唱した概念で、生きていくために不可欠でも無償であるために見えなくなっている労働を指すが、同時に、透ける布に刺繍をすることで模様が影のように映し出される刺繍の技法であることは初めて知った。意図的に選んだ技法とコンセプトが響き合っている。

西山美なコ《TELEPHONE PROJECT ’95 もしもしピんク~でんわのむこう側~》[アーカイブ展示]1995/2021年
金沢21世紀美術館「フェミニズムズ / FEMINSMS」展(2021-2022年)より

かつて街中にあふれていた公衆電話とその周辺にびっしり張られたテレクラなどのチラシ。公衆電話ボックスも街の風景から消えてしまった今、一緒に観覧した20代のメンバーには一見しただけではピンとこないということ自体も興味深かった。
写真はご紹介できないが、長島有理枝さんがキュレーションした「ぎこちない会話への対応策」でも、意表を衝かれたり、自分自身にとっての無意識の「当たり前」を再考させられたりする作品が多かった。問いが答えではなく、新たな問いを呼び込むような展覧会。観覧の機会がある方は、時間に余裕をもってお出かけください。
金沢21世紀美術館のウェブサイト
https://www.kanazawa21.jp/