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2023年度共同研究プロジェクト 木村理

採択課題名

寒風古窯産須恵器の産地同定法確立と生産流通復元にかんする文理横断型研究

メンバー一覧(氏名、所属)

木村 理岡山大学・文明動態学研究所
鈴木 茂之岡山大学・自然科学研究科
野坂 俊夫岡山大学・自然科学研究科
馬場 昌一公益財団法人寒風陶芸の里 寒風陶芸会館
森川 実(独)奈良文化財研究所都城発掘調査部考古第二研究
道上 祥武(独)奈良文化財研究所都城発掘調査部考古第三研究室

研究の概要

本研究の目的は、複数の理化学分析から寒風古窯跡群で生産された須恵器の産地同定法を確立し、その生産開始期における生産・流通状況を復元することである。

岡山県瀬戸内市に広がる寒風古窯跡群で生産された須恵器は、当時の宮都である奈良県・飛鳥藤原地域や平城宮にも搬出されていたことが文献史学の成果などから確実視され、古代の土器研究、ひいては国家成立期の手工業生産研究の中でも注目を集めてきた。

一方で、物質資料からその広域的な流通動向を跡づける作業、中でも寒風古窯跡群で本格的な生産が開始される飛鳥時代を対象とした実証的分析はほぼ実施されていない。その要因は、当窯で生産された須恵器の産地同定法が未確立であったためである。形態的な斉一性の高い当該期の土器に対しては、考古学的な型式分析のみならず理化学的な胎土分析が不可欠といえる。 そこで、本研究では複数の理化学分析な分析を駆使しながら、その成果を考古学的所見とマッチングし、寒風古窯跡群で生産された須恵器の生産流通動向を客観的に復元する。

研究実施状況

2023年度は、6月に年度初めのオンライン会議を開催し、考古学的な分析班と理化学的な分析班からなること、後者については土器の胎土分析班と、土器胎土に使用されたことが見込まれる窯跡周辺の土壌分析班に分かれて研究を分担することを確認した。そのうち、考古学的な分析班は奈良文化財研究所(7月)、寒風陶芸会館(7・9月・2月)、香川県埋蔵文化財センター(11月)にて資料の実見調査を行った。また、飛鳥藤原地域(7月)や瀬戸内市庄田工田窯(9月)、寒風古窯跡群(12月)の現地踏査も実施した。理化学的な分析班は、寒風古窯跡群出土の須恵器13点の破壊分析による理化学分析を行うとともに、同窯跡群周辺の土壌サンプル5点の分析を実施した。

研究成果

本研究は、①寒風古窯跡群現地の粘土分析に基づく粘土採取地の特定、②理化学的な胎土分析に基づく寒風窯産須恵器の特性把握、③考古学的な分析に基づく備前産須恵器の特徴把握、といった3つの柱からなる。そのうち、①については、寒風古窯跡群の近傍に位置する寒風池をはじめ、3か所・5サンプルの粘土を採取し、剥片分析を行った。その結果、寒風古窯跡群の近傍のでも特に寒風池周辺の粘土が良質であることが判明した。

理化学的な胎土分析では、破壊分析と非破壊分析を実施した。前者では、寒風古窯跡群で出土した須恵器甕を対象に、窯ごとの比較を試みた。その結果、同様の鉱物組成をもちながらも、窯ごとにわずかに粒径の異なる鉱物を含む場合があることが判明した。また、長石の溶融程度の分析を通じて、各個体の焼成温度の復元も実施している。

他方、非破壊分析では生産地資料12点と、消費地20点を対象にXRF分析を実施した。理化学特性から寒風窯産と推定される個体は考古学的な所見とおおむね合致し、考古学的・理化学的分析の双方から製品の生産流通動向を明らかにすることができた。取得したデータは向後、公表を予定している。

最後に考古学的な分析では、飛鳥藤原地域で出土した遺物の実見調査をおこない、各資料所蔵機関へ持参した邑久古窯跡群の須恵器との型式学的な共通性などを照合した。その結果、寒風窯産須恵器の宮都への供給は飛鳥時代前半期から始まることが明らかとなった。また、備前地域内でも寒風窯の本格的な操業と軌を一にして製品の流通がなされた可能性が浮かび上がった。

上記の成果については、下記の通り、査読雑誌への投稿、一般向けの講座にて公表を行った。

・木村理、馬場昌一、森川実2024「飛鳥時代前半における備前産須恵器の宮都流入過程」『文明動態学』3 岡山大学文明動態学研究所、査読あり

・馬場昌一「須恵器の杯形態からみた寒風古窯跡群」、第6回岡山大学文明動態学研究所文化遺産マネジメント部門公開講座、2024年3月23日

・木村理「飛鳥時代における備前産須恵器の流通」、同上