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2024年度 文明動態学研究所 共同研究プロジェクト 松岡弘之

採択課題名

占領期カラースライド写真がつなぐ岡山と世界

メンバー一覧(氏名、所属)

松岡弘之岡山大学・社会文化科学学域
今津勝紀岡山大学・文明動態学研究所
長志珠絵神戸大学・国際文化学研究科
福島幸宏慶応義塾大学・文学部
岩崎志保岡山大学・文明動態学研究所
德永誓子岡山大学・社会文化科学学域
東野将伸岡山大学・社会文化科学学域
中谷文美関西学院大学・社会学部
藤井和佐摂南大学・現代社会学部
北川博史岡山大学・社会文化科学学域

研究の概要

本研究は、1949年から1955年にかけて岡山に設置されていた米国ミシガン大学日本研究所岡山分室(Okayama Station)に所属したJ.W.ホール(1916-1997)が残した岡山県内外を中心とする約1,700点におよぶカラースライド写真を、当時の地域社会や学術交流の様子を活写した稀有な地域歴史資料と捉え、その撮影内容をさまざまな研究領域から多面的に分析する。あわせて、特に重要な写真の修復を進めてその活用基盤を整備する。これらを通じて、占領末期以降の岡山地域像についての知見を深めるとともに、創設期岡山大学の学知創造過程に関する基礎的研究を推進する。

研究実施状況

本研究では、2024年9月から11月にかけてJ.W.ホールが1950年代に撮影した約1,700点のカラースライド写真調査のための研究会を開催し、撮影地・撮影者の関心・撮影時期等について議論しつつ、優先して修復すべき候補の選定作業を進めた(2024年9月~11月)。また、2025年2月には政田民俗資料館(岡山市東区)および岡山市東区水門町など撮影場所を探査して、ホールらの関心の所在を検討した。3月には修復が完了した写真を確認しながら、外部講師を招き岡山軍政部に所属したホイットニー少佐が1946年に撮影したカラー映像を視聴する研究会を開催した。

研究成果

本研究では、J.W.ホールが撮影したカラースライド写真を体系的に閲覧し、ミシガン大学日本研究所岡山分室の活動と戦後岡山地域についての理解を深めた。また、特に注目される写真については、4つの観点から11点を選定して修復を行った。

 ①生産活動に関わるもの(足踏み式水車、藺草作業、葉たばこの乾燥、果樹温室、農村の子守り)

 ②政治動向に関するもの(メーデーでの行進、1952年10月施行衆議院議員総選挙)

 ③岡山市街の風景(靴修理、西大寺町周辺)

 ④商業活動するもの(移動販売、ミカン輸送)。

なお、これらの写真は以下の展覧会等で展示を行うことが決定している。

・第48回岡山戦災の記録と写真展(2025年6月~7月、主催・岡山市、於・岡山シティミュージアム)

・文明動態学研究所第2回特別展(2026年秋開催、於・岡山シティミュージアム)

また、これらの調査・企画の過程で、占領期の映像記録を確認したほか、地域の資料館職員とのネットワークを広げることができた。今後の地域での見学検討会などにつなげたい。なお、歴史実践やパブリックヒストリー関連し以下の発表を行った。

・今津勝紀「現代歴史学の可能性―月の輪の経験に学ぶ―」(考古学研究会岡山例会第24回シンポジウム、2025年2月16日、於・岡山大学)

・松岡弘之「第17師団研究の射程―文献史学の立場から」(第1回大学と戦争遺跡カンファレンス「大学と戦争遺跡―調査・保存・教育―」、2025年3月18日、於・岡山大学)

 引き続き、これらの写真を手がかりとしながら、占領期の岡山地域や岡山大学創設期における日米学術交流の実態解明に取り組む。