HOME / プロジェクト / 2022年度共同研究 / 共同研究プロジェクト 中谷文美

共同研究プロジェクト 中谷文美

採択課題名

「ちがい」が意味するものとは何か:ジェンダー/セックスへの異分野横断的アプローチ

メンバー一覧(氏名、所属)

中谷 文美岡山大学・文明動態学研究所
松本 直子岡山大学・文明動態学研究所
清家 章岡山大学・社会文化科学学域
藤井 和佐岡山大学・社会文化科学学域
光本 順岡山大学・社会文化科学学域
片岡 仁美岡山大学病院・ダイバーシティ推進センター
松田 祐衣岡山大学病院・総合内科
大澤 貴美子岡山大学・グローバル人材育成院
伊藤 詞子京都大学・アフリカ地域研究資料センター
武内 今日子東京大学大学院・人文社会系研究科/日本学術振興会

研究の概要

本研究は、人文社会科学、自然科学、生命科学の異なる学問分野を専門とする研究者が集い、男/女、あるいはジェンダー/セックスの二分法に基づいて記述・分析されてきた性差・性別のあり方をそれぞれの分野の「常識」的理解と照合しつつ、異分野横断的視点から再考することを目的とする。

社会の中のアクティビズムと連動しつつ進んできたジェンダー研究であればこそ、立場や思想の違いが研究アジェンダの設定や分析の方向性の違いに直結することも少なくない。また、2010年代後半の#MeToo運動の世界的広がりに見られるように、日本及び世界各国において共通の課題が可視化されることもあれば、日本国内で提起された#KuTooのように、ある社会に特徴的な慣行が問題化されることもある。とりわけ現在は、各種文書での性別欄記載の是非や性別を問わないトイレの設置など、具体的なイシューをめぐって、実務レベルでの対応にとどまらず研究者間の意見の対立も目立つようになった。

本研究を通じてこれらの問題に対する直接的な見解を示せるわけではないが、性差・性別という差異をどうとらえるかという根源的問いに異分野横断的視点から取り組むことで、考え方の新たな道筋を示すことをめざす。

研究実施状況 

 当初計画に基づき、以下のサブテーマを設定し、グループごとの個別ミーティングを実施した。

A 研究者のジェンダー観
問い:研究者自身が持つジェンダー観は、研究アジェンダの設定や分析にどう反映されるか
担当:伊藤詞子(霊長類学)・松本直子(考古学)

B 専門的職業人とジェンダー規範
問い:専門的職業人をめぐる社会関係(例えば政治家-有権者間や医師-患者間)における役割遂行や役割期待に性差はどう作用するか
担当:大澤貴美子(政治学)・藤井和佐(社会学)・清家章(考古学)・片岡仁美(医学)・松田祐依(医学)

C ルッキズム
問い:髪型や服装を含む装い全般の「見た目」は、性差の認知をどのように左右するか
担当:武内今日子(社会学)・中谷文美(文化人類学)・光本順(考古学)

 全体研究会としては以下の通り、3回実施した。

第1回 2022年10月14日(金)10-13時 (対面&オンライン)

第2回 2022年12月9日(金)13-16時 (オンライン)
 報告1 「美術教育をめぐるジェンダー構造」山崎明子(奈良女子大学教授) 
 報告2 「アーティスト・マザーとなること ― 女性アーティストのキャリア形成の側面から」
      高橋律子(NPOひいなアクション代表)

第3回 2023年2月3日(金)13-15時(オンライン)

第2回としては、現行のメンバーでカバーできていない分野の研究者を招聘し、ミニシンポジウムを企画・実施した。

研究成果の概要

メンバーによる今年度の研究成果の主なものは以下の通りである。

【著書】

・伊藤詞子編著『たえる・きざす』京都大学学術出版会、2022年12月

【論文】

・清家章 「 弥生・古墳時代の副葬品と性差」『とっとり考古学フォーラム2021 古代の女性史-卑弥呼から伊福吉部徳足比売臣まで-』鳥取県埋蔵文化財センター: 9-18、2023年2月

口頭発表

・武内今日子「『男』『女』に当てはまらない性のカテゴリーが可能にした実践――1990年代から2010年代の性的少数者によるカテゴリー運用から」、東京大学人文社会系研究科博士学位論文、2023年2月

・Ayami Nakatani, Comment on Ofra Goldstein-Gidoni, “We are not Ikumen, we are self-reliant househusbands,” Current Anthropology 63(5): pp.560-561, October 2022. doi.org/10.1086/721958

・中谷文美「手仕事とジェンダー―「女の手」が意味するもの」『arts/』39号、pp36-47、2023年3月。(査読あり)

・光本順「『双性の巫人』という過去の身体を読む」菊地夏野・堀江有里・飯野由里子編『クィア・スタディーズをひらく』3: 1-21、晃洋書房、 2023年3月

【口頭発表】

・武内今日子「非性別二元論的なパートナー関係の形成――X ジェンダー当事者の事例から」日本家族社会学会 第32回大会、2022年9月

・武内今日子「1990年代後半女装コミュニティにおけるジェンダー規範――『インタージェンダー』の造語とその忘却をめぐる語りから」関東社会学会第70回大会、2022年6月

・武内今日子「Xジェンダー当事者の家族形成」日本人口学会 第74回大会、2022年6月

・中谷文美「手仕事とジェンダー―『女の手』が意味するもの」(招待講演)民族藝術学会第38回研究大会シンポジウム「『手仕事』とarts/ :人類の創造的ないとなみを探る」2022年4月

・中谷文美「『女』『男』カテゴリーのちがいが意味するもの」(招待講演)日本学術会議主催シンポジウム「人類学者と語る人間の『ちがい』と差別」2022年11月